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2009年6月25日 (木)

東国原知事「総裁発言」騙したのはどちら?

 宮崎県知事東国原氏が、自民党の古賀誠選対委員長の次期衆院選出馬要請に対して「自分を自民党総裁候補として選挙を戦うなら」という法外な条件を出したことが話題になっています。氏は、前宮崎県知事安藤忠恕氏が、橋の設計業務の落札(たった690万円!)に「天の声」を出したとして辞職(民主党の小沢氏の「天の声」110億と比べるといかにも少額)したことに伴う知事選挙で、通産官僚出身の持永哲志氏を破って知事になりました。知事選で、はじめて”そのまんま東”の名を聞いた時、私もびっくりしましたが、県民の圧倒的な支持を受けて当選しました。官僚出身の知事に対する不信と、もとお笑い芸人の「異色さ・親しみやすさ」に加えて「しがらみの無さ」がこうした結果を生んだのだと思います。

 しかし、氏は地方自治について、大学(社会人枠入学)で勉強していたらしく、その政権公約であるマニフェストを持ち(当時は公選法上一般配布は出来なかった)、知事就任後それを県の新総合計画に組み込みました。こうした手法は九州では初めてということで、就任3年目の今年1月に実施された「マニフェスト中間検証結果」(早稲田大学マニフェスト研究所(北川正恭・所長)では、総合評価84点という高い評価を得ました。といっても、それがそのまま県政全体の評価を反映していたわけではなくて、最近の世論調査(宮崎日々新聞)では、これからの県政に対する要望は「景気・雇用対策」(45%)、次いで「医療福祉対策」(20.1%)であり、「県のさらなるPR」は僅か6.0%」に過ぎませんでした。(地域医療崩壊の問題はNHK特集でも放映されたくらいひどい!)

 これは、この時の知事の支持率が87.8%であり、その支持理由の42.6%が「メデイアで宮崎をPR」だったことを考慮すると、今後の県政に対する期待は、必ずしも、知事のメディア露出度(「東国ばる」という新語が出来た。その意味は「忙しいのにどこにでも顔を出す」、傑作ですね!)の多寡によって実現されるものではないことがわかります。そもそも知事といえども公務員であって、日々激務に耐えている部下職員のことを思えば、本来なら職務とあまり関係ないテレビ番組に出演することはなるべく控えるのが常識というものです。このあたり、もともと国政に関心があったようで、氏一流の自己PRだとは思いますが・・・。

 そこで、冒頭の話題にもどりますが、氏が、自民党からの出馬の条件として「総裁候補とすること」などといえば、国会議員は多かれ少なかれ大臣ポストを狙っているわけで、まして総裁(=首相)とはなんだ!「ふざけるな!」となるのは必然です。しかし、もし氏が、国政に関するマニフェストを持ち、それが現在各党から出されているものより優れているなら、そうした反感も次第に和らいでいくでしょう。いずれにしても、政治スタイルが官僚主導から内閣主導に移りつつあるわけで、その内閣の主導する政策の骨組みが、いわゆる「骨太方針」であるわけですから、ここにどのような切り込みが出来るのか、今後の氏の奮闘に期待したいと思います。

 見方によっては、今回の氏の言動は、日本における総裁(リーダー)の選出方法について、従来の派閥談合的なものからの脱却を訴えているとも受け取れます。実際、小泉首相の選出にはそのような力が働いたわけで、安倍、福田、麻生首相の選出ではなんとなくもとに戻ったような感じを受けました。それが、安倍首相の”ひ弱さ”、福田首相の”無責任”、麻生首相の”定見の無さ”につながっていると思います。鳩山前総務大臣の軽薄なパフォーマンスもこうした状況の中でこそ演じられた、つまり、アメリカの大統領選に見るような激しい言論戦やメディア戦略を駆使した総裁選出方法こそ今日求められているような気がします。(そういう意味では民主党も旧態依然です)

 だが、こうした評価も、東国原氏が提出する国政に関するマニフェストがいかなるものであるかにかかっている訳で、今のところ「地方分権」という政策イシューしか聞こえてきません。しかし、国政はそれだけでは済まないし、外交・防衛政策をはじめ、経済政策、社会・福祉政策、教育政策他、当面する郵政改革や税制改革など困難な課題が山積しています。こうした問題に対する氏のビジョン構築力・論争力が試されると思います。しかし、その顔出しが「傲岸・不遜・無礼」の印象を免れ難かっただけに、おそらく与野党を問わぬ国会議員の反撃・冷笑を覚悟すべきでしょう。はたしてそれを突破するだけの旗を氏は掲げることができるか。

 もし、へなへなと迎合的な態度をとれば、今後は芸能界でも使ってもらえなくなる恐れがあります。このあたりは、大阪の橋本知事が「あそこまで捨て身で・・・」と評価しているように、まさに「捨て身」という外ありません。ところで、氏は一体、何に対して「捨て身」の挑戦をしているのでしょうか。鳩山氏の行動も不可解でしたが、東国原氏の場合はもっと不可解です。確かに自民党は”崖っぷち”ですが、では、なぜ氏が、それに対して「捨て身」の救援に駆けつける必要があるのか?古川氏の「大政奉還」ではありませんが、「転身」に箔を付けようとしただけなのか、といぶかってしまいます。

 だが、この芝居一体誰が仕掛けたか、その結果、どのような新しい局面が生まれたかを冷静に考えてみると、まず、一、東国原氏が自民党支持者であったことが明らかになった。二、国会議員の大半の反感と冷笑を買った。三、このため、氏が民主党に鞍替えすることもかなり困難になった。四、氏の庶民「神話」が崩壊した。このことによって次回選挙における不安定要因の一つが除去された。五、もちろん、「総裁候補とする」ことが自民党に受け入れられるわけもなく、では氏にどういう対抗手段が残されているか・・・とこう見てくると、以上、一から四の手順でそのパワーがそがれ”裸の王様”同然となるという、氏にとって悪夢のようなシナリオが見えてきます。

 さてこの勝負、どちらに軍配が上がるでしょうか。新党結成という話も出ていますし、いずれにしろ、”かんぽの宿”騒動が生んだ民主党有利の政局に変化が生じたことは否めませんね。(6/26追記)

*エントリーを当初の「・・・騙したのはどちら?」に戻しました。(7/5) 

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