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2014年1月29日 (水)

政局好きの小泉元首相が読むべき、山本七平著『日本人と原子力』

小泉元首相が、東京都知事選で「原発ゼロ」を掲げて戦う細川元首相を担ぎ、「原発即ゼロ」を叫んでいます。知事選の争点を「これは、原発ゼロで日本が発展可能というグループとそうでないグループの戦いだ」などと言って、かっての郵政選挙の時と同じような、シングルイシューの対立構図にしようとしているのです。

しかし、あの時は、猪瀬氏の「日本国の研究」や竹中氏の経済理論があったからうまくいきましたが、今回は、きっとお一人で考えられたのでしょう、結果は、氏は「オリジナルの先見性がない」ことを自ら暴露することになると思います。まあ、細川氏が勝つとは考えられないし、また勝ったとしても東京都が国政を左右する力を持つわけでもありませんから、安倍首相は、「議論を活発にする上で有益ではないか」と余裕です。

「日本人と原子力」の問題は、日本が世界で唯一の被爆国ということもあって、これを冷静に論ずることは大変難しい。しかし、この問題は「エネルギー技術と人類史の発展」という歴史的文脈の中で考える必要があります。もし、これへの対応を誤ると、日本の経済力は深刻な打撃を受け、それがもたらす政治的・社会的混乱は計り知れない。何しろ戦前は、このエネルギー問題が原因で破局的な日米戦争に突入することになったのですから・・・。ちなみに、今日、反日攻勢を強めている韓国や中国は、原子力発電を止めるどころか、その大増設を計画しています。

実は、この議論は、福島の原発事故以前からなされてきたもので、山本七平は、今から約40年前に、その著『日本人と原子力』でこの問題を論じました。その後2011年3月11日に福島原子力発電所の過酷事故が発生し、日本人は改めて、その破局的な怖さを知りました。その月の31日に、私は、この山本七平の論を本ブログに紹介したのですが、これは、むしろ、今日の方がより説得力を持つのではないかと思いましたので、以下、その記事を再掲しておきます。

2011年3月31日 (木)
山本七平著『日本人と原子力』について

 山本七平は、「原子力発電」の問題を「エネルギーの歴史」という文脈の中で捉えていました。つまり、原子力は「人類のエネルギー史の一段階」として存在するものであり、同時に、「現代のエネルギー問題の一環」として存在るものである、というのです。(山本七平著『日本人と原子力』参照)

 つまり、原子力は「究極エネルギー」でもなければ、全てこれに帰一すべき「唯一のエネルギー」でもない。いわば人類が、脱水車、脱風車、脱木炭、脱石炭、そしてやがて脱石油をするように、将来はおそらく「脱原子力」の時代を迎えるであろう、と。

 といっても、こうしたエネルギー源の変化は、ある時期に一斉に切り替えがなされるのではなく、いずれの時代も数種が併存して使われてきた。そこで、脱石油後の主要なエネルギー源は何かということになると、それは原子力しかなく、従って「脱原子力」の時代が来るまでは、これを改良しつつ使うほかはない。

 日本は、明治以降、欧米諸国が試行錯誤の末に開発したこれらのエネルギー技術を、完成品として取り入れてきた。そのため、常にその技術に絶対安全を求め得た。ところが、そうした従来の日本のやり方が、今日の原子力の時代を迎えて、技術的にも不可能になりつつある。

 一方、少子高齢化に伴う労働人口の減少(=技術者の減少)が進む中で、さらに充実した高度福祉社会を維持して行くためには、相当のエネルギーを必要とする。しかし、当面その電力需要に応えるものは原子力しかない。従って、日本は、この未完成の原子力の安全利用に努めるとともに、それを、次の脱原発後のエネルギー開発へとつなげていかなければならない、というのです。

 この本は昭和51年に刊行されたもので、こうした山本七平の原子力発電に関する主張は、当時、原発に反対する勢力によって激しく批判されました。要するに原子力発電は危険!ということなのですが、これは言葉を換えて言えば、原子力を安全に平和利用する技術は、まだ未完成だ、ということに他なりません。

 不幸にして、今回の東北関東大地震に伴う福島第一原子力発電所の事故は、この原子力の平和利用における安全確保の技術に重大な隘路があったことを示す結果となりました。しかしこれは、地震の揺れと言うより想定外?の津波によるもので、もし、これが想定され、所要の対策が採られていたなら防げたはずの事故でした。

 従って、今回の事故は、日本にとっては誠に厳しい結果となりましたが、世界の原子力発電の安全性の確保という点から見れば、大きな教訓をもたらすものとなったことは間違いありません。これが想定外の天災によるものか、それとも当然想定さるべきことを怠った人災というべきかは、今後議論がなされることと思いますが・・・。

 私自身の印象としては、貞観の巨大地震の発生が学者により指摘され、また、万一の場合の電源喪失の対策についても、国会で指摘がなされていたとの報道もありますので、これは技術上の問題と言うより”人災”的要素の方が強いと思います。といっても、世界的に見れば原子力発電所がミサイル攻撃を受けることもあり得るわけで、今回の事故はその危険性への教訓にもなったと思います。

 もちろん、日本は、今回の事故を引き起こした当事国として、こうした安全対策上の技術を向上させていく歩みを止めるわけにはいきません。しかし、それと同時に、その他の自然エネルギー源の開発、例えば、水力発電技術(直流送電や小規模発電など)や、太陽光、風力、地熱、バイオ発電などとスマートグリッドの蓄電技術などを組み合わせた新技術の開発なども進めるべきです。

 残念ながら、福島第一原発の放射能漏れ事故が収まるまでには、まだ、かなりの時間がかかりそうです。しばらく落ち着かない日が続くことになりますが、以上紹介したような山本七平氏の所論も参考にしながら、今後の日本のエネルギー政策のあり方について、冷静かつ合理的な議論を積み重ねていく必要があると思います。

 なお、次の文章は、この本(『日本人と原子力』)の「あとがき」です。以上紹介した山本七平の主張を簡潔にまとめていますので、参考までの紹介しておきます。

あとがき

 あるいは鉄器ができたとき、あるいは水車が発明されたとき、石炭、蒸汽機関、鉄道、汽船、石油、内燃機関、航空機等々が登場したとき、人類の歴史は大きく転換した。そして新しく登場したものは、しばしば夢のような未来を想定させた。ライトがはじめて飛行機で空を飛んだとき彼は「人間が空を飛ぶようになれば、戦争はなくなる」という非常に面白い言葉をのべている。これは冗談でなく、彼は本気でそう信じ、まじめにそう考えたのである。しかしこの発明家の夢想は破れ、航空機は戦争の苛烈さを増し、世界の政治勢力の地図を大きく塗りかえただけであった。

 とはいえ、そのことは航空機が平和利用にも人類の相互理解にも役立たぬ無益な発明であったということではない。これは、人類がはじめて石器をつくって以来、常にくりかえしてきたことだとも言える。新しい技術、新しいエネルギーの開発は、人類の政治地図を大きく塗りかえ、その過程で恐るべき惨禍を人類に及ぼす。同時にそれは、人類にとって不可欠の存在となり、その利用は新しい技術の出現までつづき、この間、大きな便益を人類に提供しつづけたと。

 とはいえその便益は、常に「人類に平均」ではなかった。否、政治地図の塗りかえ自体が、それを独占したものの、一種の恐るべき支配力を物語っている。そしてわれわれは好むと好まざるとにかかわらず、石油時代の終りに位置し、新しいエネルギーの時代を迎えようとしているわけである。それは人類が常に経験してきたことだともいえるし、また、全く新しい事態だともいえる。というのは「終り」は常に一つの混乱を招来し、始まりもまた一つの混乱をもたらす。

 しかしいままでは、「終り」が来る前に、新しい技術が過去を葬って行ったわけ――いわば、水流が途絶えたわけはないのに、石炭と蒸汽機関にとって変わられたのであり、石炭が涸渇したのでないのに石油にとってかわられたという形で、相当に長い新旧並存期間があったわけである。だが石油に関する限りこの状態は同じでなく、今年就職した人が停年を迎えるころに、果して、今のような「ガソリンエンジンつき自動車」が存在し得ているかどうか、だれも明言できないのが実情なわけである。この意味では、今まで経験しなかった新しい時代なのかもしれぬ。

 多くの人は、生活水準の向上、完全雇傭、社会福祉、社会保障の充実、住宅問題の解決、老後の完全保障等、多くの問題が解決されねばならないと主張している。だがそういう主張をする人が、無意識のうちに前提としていることは「今の状態が半永久的につづく」ということなのである。それが本当に「保証」されているなら、その基本的な保証を基にして、さまざまな保証を行うことが可能であろう。だが本当にその「基本保証」は存在するのであろうか。

 どこかの国が、あるいは天が、それを 「日本と日本人」に保証してくれているのであろうか? 実をいえば、それはどこの他人も他国も保証してくれず、それを保証するものは、基本的にいえば「われわれの英知」だけなのである。そして英知とは、われわれが置かれている実情を正しく把握し、これに合理的に対処する能力に他ならない。

 エネルギー問題という、すべてを支えている前提の処理を誤れば、一切は空中楼閣として消えて行くであろう。(後略)

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コメント

現在の軽水炉型原子力発電の持つ危険性や放射性廃棄物処理の問題を解決できる他の原子力を利用した発電方式が生まれるかどうか、太陽光発電の場合は発電効率が50%くらいになればいいと思います。アメリカでは風力とのハイブリッドも生まれているようです。いずれにしても当面する経済危機を乗り越えるための電力をどう確保するかという問題で、現存する原子力発電所を全て廃棄する経済損失に耐えられればよろしいですが、過渡的に使わざるを得ないのが現実なのではないですか。仮に全て廃棄したとしても現存する放射性廃棄物は残りますし、その処理方法を確立する必要があります。そしてそれができるのなら過渡的発電分の廃棄物処理もできるわけです。小泉氏の発言は啓蒙家としてなら何も問題はないでしょうが、政治家としてならこれらの課題を総合的に考えなければならないわけで、そこが疑問とされるところなのではないでしょうか。

原子力に関しては、もともと核兵器を視野にいれた開発・運用だったのであり、また化石燃料が枯渇すれば共だおれという意味で、代用にはなりません。

山本七平は、日本人と原子力で、核アレルギーから科学を無視した選択がなされることを危惧していましたが、結果としては、組織の自転のみを優先する原子力村の不当な情報操作と既得権益抱え込みという、やはり山本七平が指摘していた日本教的欠陥をさらけだしてしまい、こちらの弊害のほうが大きかったといえましょう。
これも山本七平の預言のとおりでしょう。

この点で、小泉さんはある程度の先見性がありますし、安部さんもそれがわかりつつも、立場上それが言えないという、空気に支配されて行動が制約されております。

それでも現実問題として原発の新設や、利用拡大をこれから考えることは、ナンセンスでしょう。(人材が集まるわけがない)
ですから落ち着くところに落ち着くはずです。

とりあえず、震災後の太陽パネルの実効出力の増加は、原発数基分に相当するそうですから、よく発電してくれる夏の真昼のピーク電力の相殺には大いに効いているはずです。

小泉進次郎の場合は親との距離の取り方が課題だと思いますね。何しろ地盤を譲ってもらっているし、今回の行動では組織に対する忠誠よりも親に対する孝を重視した観があります。もちろん組織に対する忠誠は合理的なものでなければなりませんが、組織が決定した舛添指示を批判するなど、今回の親の行動と同じく、結局「自分中心」だと言うことになると思います。これで先見性もないことがわかるとアウトですが、この点は親と別と言っていますので、この辺がケジメのつけどころでしょうね。

小泉首相の原発に対する考え方はこのビデオを見たからだといいます。

もしこの議論が正しいなら、それは日本だけの問題ではなく国連の問題だと思いますね。10万年先の未来に責任を持つのは日本というより人類ですから。また、そういうことなら、反原発を主張する人たちは、日本の原発再稼働に反対する以上に、中国や韓国などが計画している原発新設計画にも反対すべきです。そして国連に対しては、当面の各国のエネルギー需要を満たすためのエネルギー資源地球再分配を提案すべきです。それだけの覚悟のいる問題であって、到底都知事選で争うべきテーマではありません。従って、この選挙後、細川氏も小泉氏も老体にむち打って国家議員になるべきで、例え、今回の選挙に負けたとしても、それで退却するのはおかしい。なにしろ10万年後の地球の運命がかかっているのですから。それだけの議論をしているのだということをぜひ自覚していただきたいと思います。→人類は10万年先の未来に責任を持てるか #BLOGOS http://blogos.com/outline/79371/

小泉元首相の今回の行動はいただけませんね。氏が国会議員を引退するとき、息子に地盤を譲る形で止めたことが大変引っかかりましたが、今回の行動で氏が子煩悩で目立ちたがりなだけの普通の人物であることがわかりました。それに政治的先見性がないことも。そして無責任な変人であることも。日本のエネルギー政策にどうしてもものが言いたいのなら国会議員に復帰すべきですが、それはやらないでしょう。

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