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2020年8月 8日 (土)

新型コロナウイルスへの正しい対処法(2)――児玉龍彦名誉教授説について

 日本では、PCR検査のやり方について、ダイヤモンドプリンセス号以来、全員検査をやるべきだ、いや、症状が出た人を対象にやればいいという議論が続いてきた。この検査の拡大に、かって、保健所も、そして病院の医師も概ね消極的だったのは、従来の感染症対策におけるウイルス検査法が、症状が出て感染が疑われる者を対象にしていたことと、検査を行う体制そのものが、医療体制も含めて、それに対応するだけのキャパシティしか持っていなかったということだろう。

 ただ、この議論を難しくしたのは、COBIT-19というウイルスの特徴として、感染しても無症状の人が多いということで、「中国とアジア各国の臨床データを研究した論文(Xi He中国人研究者4月15日発表)では、感染者が他者へ感染させる感染力は、発症する2~3日から高まる・・・つまり、発症前、症状が出ていなくても感染力がある」ということだった。

 これが事実であれば、感染拡大を封じ込める唯一の方法は、感染者を隔離するということだから、有症者はもちろん無症者も、可能な限りPCR検査をして、陽性となった者を見つけ出し隔離すべきだということになる。

ところが、その検査の精度は70%くらいと言われていて、「ソフトバンクグループが同グループ社員や医療従事者など約4万4000人を対象に実施した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査では、全体の抗体陽性率は0.43%」だったというから、一万人中43人の陽性者を見つけ出すのに、精度70%のPC衛検査を実施すると、3,000人の擬陽性あるいは陽性見過ごしを出してしまう。そこで、まず症状が出た人を検査して、陽性であればその濃厚接触者を追跡して検査を行い、陽性者を隔離すべきということになる。

 この議論の堂々巡りが今日も続いているわけだが、この両者を互いに接近させる工夫はないか考えて見ると、前者については、PCR検査の精度を上げることと、検査対象を、感染が起こりやすい場所を選んで集中的に実施することが考えられる。後者については、無症状者で感染している者を見つけ出すため、濃厚接触者の範囲をできるだけ広めることと、無症状者陽性者の増大に対応する施設を確保することが課題となる。

京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授は、日本で感染者も死亡者も少ないことについて、「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という。「新型コロナウイルスにはS型、K型、G型の3種類があり、現在の新型コロナウイルスはG型である。2019年10~12月ごろにS型が世界に拡散、K型は2020年1月ごろをピークに日本に侵入。S型もK型も、無症状から軽症のため、気づかないまま治癒した場合が多い」。

「その後、G型が中国・武漢で拡散した。S型はG型の致死率を上げる特徴があり、逆に、K型はG型に対する獲得免疫を有する。武漢は1月23日にロックダウン(都市封鎖)され、欧米各国は2月上旬から中国全土からの入国制限を行った。一方、日本は対応が遅れ、入国制限を中国全土としたのは3月9日だった。

つまり、欧米各国は、S型のコロナウイルスに感染し、K型の流入が少なく、G型が流入したため、重症化していて、日本は、S型の後で、K型も流入したため、G型に対する免疫を持っているから感染者数が少ないということ。欧米各国と日本(韓国や中国)の感染者数の違いは、既にK型に感染していたかどうかの違い」というが、ちょっと狐につままれたような話。

これに対して、国際医療福祉大学の高橋泰教授は、日本で死亡者が少ないことについて、日本人は「リスクの高い高齢者をウイルスから隔離する仕組みを高齢者施設で徹底していること」「自然免疫力が高いこと」「欧米人に比べて「サイトカイン・ストーム」の起きる率が低く、起きても血栓ができにくく重症化しにくいこと 」の三点を指摘している。

この中の「自然免疫力が高いこと」については、「自然免疫力、つまり、自然免疫で治る人の比率が欧米より日本人(アジア人)のほうが高く、その結果「軽症以上の発症比率」が低くなるが、抗体陽性率も低くなる。自然免疫力(特に細胞性免疫)の強化にBCGの日本株とロシア株が関与した可能性は高いとみている。しかし、「自然免疫力が高いこと」についてのそれ以上の言及はない。

一方、児玉龍彦氏の説は次の通り
 日本人を含め東アジアに住む人々はこれまでに繰り返し中国南部を震源とする新型コロナと非常に似通ったウイルスに起因する「風邪」を経験してきた。そのおかげでわれわれの血液中には新型コロナに似通ったウイルスに対する免疫を持つT細胞ができている可能性が高いことがわかってきた。それは新型コロナウイルスそのものに対する獲得免疫ではないため、免疫効果は完全無欠とまではいかないが、ある程度までのウイルス量への暴露であれば発症を防げるし、運悪く感染してしまっても重症化に至らずに済んでいる可能性が高いというのだ。児玉氏も日本や東アジアで死者が少なかった理由として、この説を支持する。(【金子勝の言いたい放題】20200317)

このように、三者三葉「ファクターX」の存在を説明しているわけであるが、その後の日本のとるべき方策については、それぞれの仮説に応じて、とるべき対応策も違っている。

まず、上久保氏だが、「自粛自体が不要」「三密(密閉、密集、密接)の回避」や「マスクの着用」も関係なく、科学的根拠に基づかない対策」となる。また、「免疫を維持するには、適度にウイルスに曝露する必要がある。免疫が低い高齢者や乳幼児は感染対策をする必要はあるが、そうでない人はむしろ外に出て集団免疫を獲得して、ウイルスと共存したほうが有効」というもの。三説の中では最も楽観的な見方で、逆に言えば最も危険性をはらむ提言となる。

高橋氏は、「年齢やリスクに応じた対策を打つべき・・・30歳未満では重症化リスクは限りなくゼロに近いので、 平常に戻すべき」「30~59歳も通常の経済活動を行ってよい・・・罹患した場合は症状に応じて自宅待機などを行い、集団発生すれば職場の閉鎖をすればよい。70歳以上の高齢者は流行している間は隔離的な生活を維持せざるをえないだろう。何度も言うが、感染リスクはある。しかし、2%未満の重症化リスクを減らせばいい。」

この両者は、PCR検査を無症状者に拡大することには否定的で、高橋氏は、「最初にやるべきはPCR検査の拡大ではなく、ウイルスの遺伝子解析だ。従来と同じ型のものなのか、違うものが来たのかを判別することが重要だろう。感染者を捕まえて隔離することより、感染パターンを把握することが重要だ。感染力が上がったのか、毒性が強まって死亡率が上昇するのか。それに応じて対策も変わる。」という。

一方、児玉氏は
「中国は、感染集積地域と非感染集積地域を分けて、感染集積地域に徹底的に医療資源を投下しました。5万4000人もの医師や看護師が武漢に送られたといわれています。それから、医療機関の患者や医療従事者に対してPCR検査を実施して陽性の人をあぶりだして隔離しました。病院を“きれい”にして院内感染を防いだのです。」という中国での経験をもとに、次のような提言を行っている。(「日経ビジネス20020.4.17」)

「学校の一斉休校の必要はない」「軽症者、重症者を分けて専門的に治療する体制を確立する」「社会活動を維持する一方、感染が起こりやすい場所、例えば、病院や介護施設で徹底したPCR検査を行い、陽性者を症状に応じて専門的に隔離する。「ビッグデーターを活用して徹底的な追跡調査を行い感染者を隔離する。」つまりPCR検査を予防的に「感染集積地」を対象に徹底的に行うことで感染拡大を封じ込め、医療崩壊を防ぐ」という。

この三説を総合して言えること。それは、学校や社会活動を維持しつつ、無症状者、有症者、重症者に応じた隔離・医療体制を確立することについてはほぼ同じ。違いは、感染を抑えるためのPCR検査の活用方法が違うということ。特に児玉氏は、これを「感染集積地」と思われる場所で集中的に無症状者も含めて行い、感染者を見つけ出して隔離し、感染拡大を封じ込めるという考え。(【金子勝の言いたい放題】20200317)

私自身はPCR検査について、これまで、感染が疑われる者について医者の判断でPCR検査を受けられるようにし、陽性とわかったら、その濃厚接触者を徹底的に追跡し、PCR検査を行い隔離すべき。重症者→死者を低く抑えればいいわけで、全体的な感染状況を見ながら、高橋氏の言うような「感染ステージモデル」に対応した医療体制を確立していけばいいという考えだった。

これに対して児玉氏の提言は、不特定多数に対する検査拡大ではなく、「感染集積地」で、かつ、検査結果をフィードバックできる施設等を選んで集中的に検査するというもの。氏によれば、それを行う検査体制は大学等を含めれば十分ある。費用も一人5,000程度で済むという。昨日の報道では、厚生労働省も、感染が発生した養護施設等では、濃厚接触者に限らず施設全員のPCR検査を認めるというようなことだったが、都会における今の感染状況を見れば、それも必要になるかと思った。

最後に、このPCR検査の拡大をめぐる議論にどう決着をつけるかだが、要は、PCR検査等の精度が上がり偽陽性等の問題がなくなり検査態勢も充実し、かつ、増大する陽性者を適切に隔離し医療崩壊を防ぐ体制が出来れば良いということになる。前者については、医療機関や大学等も含めて検査を行えるようにする。抗体、抗原検査等とうまく組み合わせ、児玉氏の言うフィードバック体制を確立することで検査の精度を上げる。後者は、検査拡大によって増大する陽性者の大半を占める無症状者乃至軽症者の隔離を可能にする施設を確保する。

おそらく、これらの問題の解決には、感染症法等の改正の問題も出てくるのであろうが、児玉氏は、ビッグデータの活用、個人認証システムの確立、情報開示などを含め、旧来の保健所中心の感染症対処システムを抜本的に改める必要を説いている。また、今回の第二波の感染拡大についてはウイルス変異も指摘されている。高橋氏も遺伝子解析の重要性を訴えているが、研究者が総力を挙げて遺伝子レベルの研究体制を確立し(児玉氏によればの阻害要因があるとのことだが)感染拡大の抑止と社会経済活動の両立を図っていただきたいと思う。(最後の2バラグラフは8月9日10:10追記)

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コメント

児玉氏の”来週は大変なことになる、来月は目を覆う状況になる”はあたらなかったね。その主張の根拠は感染集積地でのPCR検査による感染封じ込めがなされていない、ということだったが、それが誇張されて世田谷モデルの「PCR検査『誰でも・いつでも・何度でも』になった。実際は「区内すべての介護施設職員や保育士ら計約2万人を対象」で”誰でも・・・”ではない。要は、PCR検査等の精度が上がり偽陽性等の問題がなくなり検査態勢も充実し、かつ、増大する陽性者を適切に隔離し医療崩壊を防ぐ体制が出来れば良いわけだが、アメリカニューヨーク州での大量検査による陽性者の隔離は98%以上が自宅とのこと。これジャー感染拡大は抑えられないね。沖縄県は濃厚接触者で無症状者は65歳以上またはこそ疾患あるものを除いてPCR検査は負担が大きいのでやらないと発表した。最近は感染症法の改正や、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)による規制強化も検討されている。まあ検査の精度が上がり短時間で手軽に安価に実施できれば数日間は感染させられることはあってもさせることはないわけで、条件さえ整えればそうした有効期限付きの証明書も有効かも知れないね。

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