安倍元首相暗殺の隠された真相と日本人の弱点
なぜ安倍元首相が件の団体のビデオメッセージの依頼に応じたか。森友学園事件で籠池に逆恨みされ痛い目にあったのになぜ「統一教会」というさらに危険な似非宗教団体との関係を断ち切らなかったか。それが私の疑問でしたが、宗教学者の島田裕巳氏の解説はそれに応えるヒントを与えてくれました。
「まず大切なのは、旧統一教会には宗教的側面と政治的側面があるということです。目的の一つに、朝鮮半島の統一があります。創設者の文鮮明氏は、北朝鮮と太いパイプがあった。朝鮮問題にかかわる政治家が旧統一教会に近づくのは、ある意味不思議ではないでしょう。ただ岸氏や安倍氏に旧統一教会と政治的なつながりはあっても、宗教的な関係はなかったと思います。」
岸氏の場合は戦後の日本社会を風靡したソ連、北朝鮮、中共礼賛の空気に対抗する一手段として統一教会の利用でした。では安倍氏の場合は?拉致問題の解決にこのチャンネルを生かそうとした、それ以外にトランプと顔をそろえて統一教会にビデオメッセージを送る政治的理由はないように私は思いました。
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次は、よく整理された討論番組です。日本人は無宗教とよく言われます。しかし人間は死を意識する動物で必然的にそれに区切られた生の意味について考えるようになります。それに応えるのが宗教で、そこでそうした人間の限界につけ込んだ反社会的な宗教団体も現れるのです。従って日本人は無宗教というのは間違いでこうした問題に答える伝統的な考え方に無自覚なだけで、そのため自分の宗教的信念と他の宗教との比較もできないし教義の当不当の判断もできない人が出てくるのです。驚くべきことに統一教会の高額献金や霊感商法の被害は世界の統一教会組織の中で日本だけの現象だそうです。今回の事件が日本人に教えていること、それは日本人も宗教的耐性を身につける必要があるということです。世界の宗教、何よりも日本の宗教について学ぶ必要があります。この点私は日本の仏教界の怠慢を指摘せざるを得ません。なんと言ってるか皆目わからんお経を上げて高額なお布施を取ってる。なぜ日本語で仏教の教えを語れないのか。また学校もなぜ宗教について教えないのか。実はこうした問題をおろそかにしていることが今日の日本の思想的混迷を招いている、私はそう思っています。
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それから、安倍元首相の政治家としての業績の評価について、元京大准教授の物理学者小出裕章氏は「アベさんがやったことは特定秘密保護法制定、集団的自衛権を認めた戦争法制定、共謀罪創設、フクシマ事故を忘れさせるための東京オリンピック誘致、そしてさらに憲法改悪まで進めようとしていた。 彼のしたこと、しようとしてきたことはただただカネ儲け、戦争ができる国への道づくりだった。」アベさんに対する銃撃について思うこと
つまり、安倍さんがやった「特定秘密保護法制定、集団的自衛権を認めた戦争法制定、共謀罪創設」は憲法を改正し、「戦争ができる国への道づくりだった」といい、「アベさんにはこれ以上の悪行を積む前に死んでほしいとは思ったが、殺していいとは思っていなかった。悪行についての責任を取らせることができないまま彼が殺されてしまったことをむしろ残念に思う。」とまでいっているのである。
ではなぜ安倍元首相が小出裕章氏のいう「悪行」をやったのか。もちろん「ただただカネ儲け、戦争ができる国への道づくりだった」というのは間違いで、その目的は、「戦争ができる国への道づくり」とは逆の「戦争を起こさせない国への道づくり」だったのである。彼は、習近平の「中国の夢」(中華帝国の復活)実現を目指す「大国外交」の向こうをはるように、「地球儀外交」という名の外交理念を打ち出し、自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった普遍的価値に立脚した世界秩序形成の必要性を世界の国々に説いて回り、そのための基本戦略の一つとして「自由で開かれたインド・太平洋」の構想実現を目指した。その結果、日米豪印の「QUAD」という枠組みの形成、もう一つの米・英・豪三カ国による「AUKUS」という枠組みの形成、そしてNATOにおける「中国の野望と行動はルールに基づく我々の同盟国にとって体制上の挑戦」という共同声明にまで到達したのである。
こうした枠組み形成に取り組む前提としてまず整備しなければならない日本国の条件が「特定秘密保護法制定、集団的自衛権を認めた戦争法制定、共謀罪創設」であって、これらの法整備”を行うことで”自らの国は自ら守る”という意思を明確にしない限り、「自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった普遍的価値に立脚した世界秩序の形成」を世界に訴えることはできなかったのである。
モリカケサクラという犯罪立証困難な話題にすがって安倍元首相を執拗に攻撃し続けた人々の目には、こうした安倍外交が見えるはずもなかった。というより、そんな外交努力は必要ない。ただ「戦力不保持、交戦権は認めない」と定めた日本国憲法第九条を守ることが、日本の安全ひいては世界の平和を維持する絶対条件だと考えたのである。従って、こうした安倍外交がマスコミにおいて好意的に評価されたことはほとんどなく、国民は氏の暗殺後、安倍外交の国際的評価に触れて初めて、この事実を知ることになったのである。
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おそらく、ここしばらくは安倍元首相と統一教会との関係をめぐって様々な議論が交わされることだろう。安倍氏を支持する側も、統一教会にビデオメッセージを送ったことは結果的に失敗とし、氏の「付き合いの良さ」「脇の甘さ」を指摘することになるだろう。私も一時そう考えたが、しかし、そうした危険性を犯してまで、氏があえてこうした政治的選択をしたのは、冒頭に述べたような深謀遠慮があったからではないだろうか。もちろん、これは安倍元首相がビデオメッセージを送った動機の推測であって、教団幹部の殺害計画を安倍元首相暗殺に転化させた犯人の異常心理を正当化するものではない。ここにはこの飛躍を可能にした別の要因が働いていたはずであり、その究明も合わせて徹底的に議論する必要があると思う。
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